専門家とお客様をつなぐ「安心の窓口」、大津市のすずらん行政書士事務所、中川由恵と申します。
当事務所では、遺言・相続・離婚のご相談をお受けしています。
このブログでは、お客様にぜひ知っていただきたい相続などの知識や私の活動記録などを発信しています。
相続が起こった場合、亡くなった方(被相続人)の財産の中に「農地」があるケースというのは、珍しいことではありません。
被相続人が農業をしていた、という場合はもちろんですが、ご自身で農業はしていなかったけれど、代々受け継がれている農地を手放さずに所有している・・というケースなども大いにあります。
都会に住んでいる方が、生まれ育った故郷や両親の田舎に農地を所有しているが、どこにあるのか正直あまりわかっていない・・などということもあるでしょう。
まず、日本において、「農地」はどのように捉えられているでしょう?
そして、農地を相続した場合、相続の通常手続き以外にどんな手続きが必要でしょう?
今回はその辺りを中心に、お話をしてみたいと思います。
ところで「農地」というのはそもそも何を指しているのでしょうか。
日本には「農地法」という法律があり、第一条において『国内の農業生産の基盤である農地』が『現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、……中略……耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。』と書かれています。
法律の第一条というのは、目的規定または趣旨規定が置かれていることが一般的で、農地法において、日本における農地の位置づけと目的が、このようにまとめられています。
「農地」は、「国内の農業生産の基盤」であり「重要な資源」として大切に扱われていることがわかりますね。
この農地法、第2条第1項に『「農地」とは、耕作の目的に供される土地』と記載されています。
具体的には、主に「田」や「畑」のことを言います。
まずは、固定資産税通知書や登記事項証明書など書類上の「地目」と、現在の土地の状況を照らし合わせて確認することから始めてみるとよいでしょう。
(もしも現状と登記が一致しない場合は、何らかの手続きが必要になると思われます。
その際は個別にご相談ください)
農地である「田」や「畑」を所有していた方が亡くなって、それを遺産分割協議によって相続した場合、遺産分割協議書を作成して、法務局で相続登記をして、「はい!終了!」とはいきません。
「宅地」の場合は、基本的に手続きはこれで完了です。
しかし、農地の場合は、この後に農地のある各市町村の農業委員会へ「届出」が必要になります。
今「届出」と書きましたが、これは「許可」とは異なります。
「許可」とは必要事項を記載した書類を提出し、申請内容を役所に審査して認めてもらわないと、手続きは完了しません。
「届出」は必要事項を記載した書類を提出することで手続きが完了します。
この2つは、役所に書類を提出する、という行為は同じであっても、意味合いが全く違う、ということになります。
農地を所有している人によって、生前に売買や贈与が行われ、農地の「所有権の移転」が行われた時は、農業委員会の「許可」が必要となるのですが、これについては農地法第3条で定められています。
この「許可」は必ずしも下りるとは限りません。
権利を取得するにふさわしいかどうか、農業委員会の総会によって判断されます。
しかし、相続(遺産分割、包括遺贈を含む)などにより農地の権利を取得した場合というのは、この「許可」ではなく、「届出」の手続きとなるということが農地法第3条の3に規定されています。
この「届出」ですが、権利取得を知った日から10ヶ月以内に行う必要があります。
提出先は、農地のある各市町村の農業委員会窓口です。
手続き上は添付書類を添えて届を出すだけで終了します。
決して難しいものではありませんので、忘れずに行ってください。
これらについて、普段から農業をされている方の場合は、地元の農業委員の方と接点もあり、よくご存知かもしれません。
しかし、所有をしているだけで農業はしていない、という方は、この機会に、日本における農地の役割を知っていただき、相続の場合には「届出」、売買や贈与の場合は「許可」という手続きが必要、ということを知っていただけたら、と思います。
今日は、遺産分割協議により農地を相続した場合について書きましたが、もしも、遺言書で農地を誰かに遺したい、または遺言書によって農地を得た、という場合は、遺言書の書き方次第で手続き方法も「許可」が必要なのか「届出」で済むのか、変わってきます。
これらについては、またの機会にブログに書けたら・・と思います。
個別にご相談になりたい方は、弊所までお気軽にご相談ください。
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