- suzuranjimusho
- 7月27日
- 読了時間: 4分
専門家とお客様をつなぐ「安心の窓口」、大津市のすずらん行政書士事務所、中川由恵と申します。
当事務所では、遺言・相続・離婚のご相談をお受けしています。
このブログでは、お客様にぜひ知っていただきたい相続などの知識や私の活動記録などを発信しています。
今回のテーマは、「子どものいないご夫婦の相続」についてです。
「子どものいないご夫婦は、配偶者が全て相続できる・・」
と皆様思ってはいませんか?
生前に特に準備は必要ない、と思って何もしていなかったが、いざ相続が発生すると、
「自分だけが相続人じゃない、と初めて知り、手続きの進め方がわからない・・」
ということでご相談を頂くケースがよくあります。
ご夫婦仲良く暮らしてこられて、
「うちは子どもがいないし、相続でもめるようなことはないはず」そう思われる方が多いのですが、実は、子どもがいないからこそ、生前の備えがとても重要なんです。
夫婦だけのつもりが、思いがけない人が相続人に?
たとえば、こんなケースをご紹介します。
「夫婦ふたり暮らし、結婚して50年。子どもはいない。
家も預金も、夫の名義で、妻は専業主婦。
ある日突然、夫が亡くなった・・」
この場合、妻がすべてを相続できる…と思われがちですが、
実際には、夫の「兄弟姉妹」や「甥・姪」にも相続権があるのです。
民法では、相続人の順位が決まっていて、
配偶者は常に相続人になりますが、
① 子
② 親(直系尊属)
③ 兄弟姉妹
の順番で相続人となります。
さらに、子も親もおらず、兄弟姉妹も亡くなっていれば、その子ども(甥や姪)が代わりに相続人になります。
つまり、「あまり仲が良くない兄弟姉妹」や、「まったく交流のなかった甥や姪」などと、不動産や預金の分け方について話し合わなければならないこともあるのです。
「知らなかった」では済まされない現実
実際のご相談では、こんなお悩みを耳にします。
・「夫のきょうだいと何十年も連絡を取っていない」
・「名義変更のために、甥や姪の印鑑が必要と言われて驚いた」
・「相続放棄してくれると思っていたのに、取り分を求められた」
夫にとっては兄弟姉妹あっても、妻にとっては赤の他人のような関係性ということも多くあります。
夫がいたからこそ関係性を保てていただけで、亡くなった後に、妻単独で連絡を取って協議をする・・それだけでも、残された妻にとって大きな負担となるのではないでしょうか。
まして、一度こじれてしまうと、相続手続きがなかなか進まず、残された配偶者の心労は計り知れません。
銀行口座が凍結されたまま、生活費に困ることすらあります。
遺留分のことを耳にして、心配してご相談くださる方もいらっしゃいますが、兄弟姉妹(甥姪)には遺留分はありません。
それなら一安心!と思われるかもしれませんが、遺言書がない場合、遺産分割協議において「印鑑を押さない」と言われてしまったら・・?
法的な根拠はないにもかかわらず、印鑑を押してもらうために、幾らかを支払うことが必要となる場合もあるのです。
遺言があれば、「守りたい人」をしっかり守れる
こういった事態を防ぐために、生前に「遺言書」を残すことがとても効果的です。
このケースの場合、遺言書があれば、
✅ 配偶者にすべて相続させることができる
✅ 不動産や預金の名義変更について、兄弟姉妹への協議が必要なく、スムーズに進む
つまり、「自分が亡くなった後に、配偶者が困らないように」準備ができるのです。
公正証書遺言にしておけば、手続きもより確実で安心です。
最期まで、ふたりらしく暮らすために
夫婦ふたりで築いてきた、かけがえのない暮らし。
配偶者を大切に想う気持ち、そして、自分が亡き後も安心して暮らしていけるように。
その想いを、きちんと形にしておくことは、「もうひとつのやさしさ」だと私は思っています。
・遺言を書く
・どんな財産があるか整理しておく
・信頼できる人に相談しておく
それが、残された配偶者の安心につながり、ご夫婦おふたりの人生を、最期まで
“ふたりらしく”守ることになるのです。
「まだ早いかな」と思っている今こそ、始めどき。
これからの配偶者のことを思えば、早すぎることなどありません。
どのように手続きを進めればよいかな、と気になられたかたは、いつでもご連絡ください。
行政書士として、相続コンサルタントとして、あなたの想いを形にするお手伝いをいたします。
- suzuranjimusho
- 6月25日
- 読了時間: 6分
専門家とお客様をつなぐ「安心の窓口」、大津市のすずらん行政書士事務所、中川由恵と申します。
当事務所では、遺言・相続・離婚のご相談をお受けしています。
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私がお客様に生前の対策をお勧めした時、多くの方が仰る言葉は
「うちの財産なんて、不動産だけやから大丈夫!」
という言葉。
皆さまもよく口にしたりしていませんか?
しかし、不動産が財産のメインとなっている場合、どのように相続させるおつもりでしょうか?
その不動産を相続される方は良いとして、他の方が何か代わりに相続できる財産があるでしょうか?
相続人が複数人いる場合、不満が出ずにうまく分けることができそうでしょうか?
そこまでお考えになっていますか??
例を挙げて考えてみましょう
ここに、夫Aさんと妻Bさんのご夫婦がいて、このご夫婦には、長男のCさん、長女のDさんがいるとしましょう。

夫Aさんの財産は、
・預貯金が500万円
・自宅の土地と家屋(計2000万円程度の固定資産税評価額)
としましょう。
そして、長男Cさんがご夫婦と同居していて、長女Dさんは結婚して遠方にいる・・
こういうご家庭はよくあるのではないでしょうか。
この状況で夫Aさんが亡くなった場合、法律で決められた相続人は、妻のBさん、長男のCさん、長女のDさんです。
遺言書がなく、遺産分割協議をするとなり、財産は一旦妻Bさんがすべて相続する、というパターン・・これもよくあることでしょう。
そして、更に数年が経ち、今度は妻Bさんが亡くなった時、相続人は長男Cさんと長女Dさんとなります。
家は同居していた長男Cさんがそのまま住み続けるため、Cさんが相続したいと言い、では預貯金は長女に・・という案が、すんなり決まれば安心です。
遺産分割協議書にまとめて、手続きを進めていけば大丈夫です。
もし話がまとまらなければ?
しかしそこで、長女Dさんが、「もらう金額に差があるよね」と言い出したら・・?
「私は500万円しか相続しないのに、お兄ちゃんが2000万円の評価額の自宅を相続するのって、不公平じゃない?」と思うことは絶対ないでしょうか?
長女Dさんの子どもたちが受験期でこれからお金が要る・・という状況だったりすると、もらえるものをもらいたい、と思うのは自然な感情ですよね。
また、配偶者や第三者から「いやいや、もらえる権利はあるのに、それでいいの?」ということを言われて「それならば・・」と思うこともあるかもしれません。
法定相続分で言えば、長男長女ともに1/2の権利があるので「その分はもらいたい」と思っても何らおかしくはないのです。
代償金という解決策
その主張を長女Dさんがしてきたときの解決策として、長男Cさんから長女Dさんへ「代償金」を払う、という方法があります。
今回この金額で考えると
(預貯金500万+不動産の固定資産税評価額2,000万)÷2=1,250万
が一人ずつの法定相続分となるので、
長女Dさんの相続分500万円との差額750万円を、長男Cさんが現金で支払うという方法です。
不動産を売却せず、お金に換えられない場合は、ご自分の資産の中からその現金を用意できれば、それで丸く収まるかもしれません。
しかし、長男にその資産がなければ?
それでも長女がその主張を曲げなければ?
解決するために家を売ってお金に換えて、公平に半分ずつにする、ということが必要になることも、十分起こり得るのです。
そして、ここで一つ注意していただきたいのは、この例では不動産の価値を「固定資産税評価額」として計算しましたが、当事者間の話し合い次第で「実際の売却価格」として計算したい、いやいや「相続税額」としての計算方法もあるだろう‥とお互いの主張が一致せず、この段階で揉めることも少なからずある、ということです。
共有名義は解決策?
上記の分け方ではなく別の解決策として「家を共有名義にする」ということを考える方もいらっしゃるかもしれません。
この方法でこの時は一旦話し合いは収まるかもしれません。
しかし「不動産の共有名義」、専門家からからすると、決してお勧めすることはできません。
例えば、近々売却することが決まっているようなときには、共有名義にするのは有りでしょう。
もちろん、検討材料は他にもありますが、お金の分配という意味合いでは一つの方法だと思います。
なぜなら、相続人の一人が不動産を相続して、その後売却をした場合、その売却金を他の相続人に渡そうとすると、それは「贈与」となってしまい、簡単なことではないからです。
しかし、この例のケースのように、売却予定がなく住み続ける、またはとりあえずしばらくの間保有しておく、などの場合に共有名義にしてしまうと、この先面倒なことになることが安易に予想されます。
長男が住んでいるのにもかかわらず、長女が売りたいと思ったら?
共有者同士の、売りたい・貸したいのタイミングが一致するとは限りません。
そして、長年共有状態が続いた状態で、また新たな相続が発生すると、その持分に応じてどんどんと名義が細分化されていくことになります。
そうなるとますます、その意思を全員で合致させていくことは難しく、その不動産をどうにも動かせない、という状況が起こり得ます。
共有名義は解決の先延ばし
一時の解決のために、不動産を共有名義にした場合、それは「本当の解決を先延ばししただけだ」ということをぜひ知ってください。
特に揉めているご家庭というわけでなく、円満に不動産を共有にする、というご家庭もよくお見かけします。
とりあえず目の前に不便も問題も感じずに住み続けていけるため、共有名義がはらむ危険性を気にすることなく年月が過ぎていきますが、そのうちに共有者が1人亡くなり、また1人亡くなり、いざ不動産をどうにかしたい、と思った時には、どうにもできない、という事態に陥る可能性が十分にあります。
そうなる前に・・
皆さまには今回のブログを通じて
「不動産がメインの財産で、他にうまく分ける財産がない場合」や
「不動産を共有にすることが解決策だと思っている方」
には、生前にしっかり検討していくことが必要だ、ということをぜひ知って頂きたいと思います。
「うちの財産なんて、不動産だけやから大丈夫!」
と思っていた方がいらっしゃれば、ではどうすればよいのかという対策をご一緒に検討させていただきますので、どうぞお気軽にお問合せを、または『すずらんcafe』の無料相談をぜひお申し込みください。
- suzuranjimusho
- 6月1日
- 読了時間: 7分
専門家とお客様をつなぐ「安心の窓口」、大津市のすずらん行政書士事務所、中川由恵と申します。
当事務所では、遺言・相続・離婚のご相談をお受けしています。
このブログでは、お客様にぜひ知っていただきたい相続などの知識や私の活動記録などを発信しています。
2025年3月のブログで解説をしました自筆証書遺言。
前回は、主に「自宅にあっても開けないで」というお話と共に、法務局に預ける方法もある、ということをご説明しましたが、覚えていらっしゃいますか?
今回は、今年のGW明けに、自分自身の遺言書をこの「法務局預かり」としてきましたので、その体験記を書いていきます!
法務局に預ける経緯
もともと、私は自筆証書遺言を約2年近く前に書いてはいましたが、自宅に保管をしていました。
私の相続人は、成人した娘と未成年の息子の2人であり、内容は暫定的です。
亡くなった後の手続きのことを考えると、公正証書にしておく方が良い、と思ってはいましたが、私が生きていれば息子が成人した時点で内容が変わるのは確実。
それならば、法務局預かりの方が手軽で良いのではないか、と思ったのです。
預けるための流れ
まずは、書き直すために用紙を準備しました。
法務局に遺言を預ける場合、遺言書はデータとして保管されます。
その関係で、遺言書の用紙はA4サイズの紙と決まっており、左右上下書いてはいけない余白部分があります。

(法務局HPより)
この約束を守れば、用紙は何でも良いのですが、私は法務局が発行している用紙を手に入れていたため、それを数枚コピーしました。
そして、この用紙に、法律で決められた要件を満たすよう注意しながら、丁寧に、自筆で、全文を書きました。
内容としては、自宅に保管していたものと同じにしました。
書き間違えても訂正は可能ですが、訂正の仕方も法律で決められているため、間違えないようにしたいと集中して書きあげました。
長いと書くのも大変ですし、間違える可能性も増えるので、自筆証書遺言に適しているのは、内容が簡潔な遺言、ということになりますね。
そして、「付言」も書きました。
この「付言」は、相続人へ向けた手紙です。
色々と任せてしまう娘に対してお願いとねぎらいを、そして、2人に対して母親として伝えたい想いを、便せん1枚に書きました。
そして、次は法務局へ予約を入れます。
遺言書を預ける法務局はどこでもいい、というわけではなく、まず「遺言書保管所」である必要があります。
そしてその中で「遺言者の住所地、本籍地、または所有する不動産を管轄する遺言書保管所」のいずれかから選択をします。
滋賀県であれば、この「遺言書保管所」は大津地方法務局の供託課、甲賀支局、彦根市局、長浜支局が該当します。
私の場合、大津市に自宅があるため、自宅から一番近い「大津地方法務局の供託課」を選択しました。
法務局に預けるためには、予約が必要です。
電話で可能ですが、私は用事があり訪問したので、直接窓口で予約をしました。
日にち(平日のみ)を決め、時間帯がいくつか決められているので、その中から16時を選びました。
当日、持参が必要なものは、以下になります。
・遺言書
・保管申請書
・住民票(本籍・筆頭者の記載があるもの)
・本人確認書類(マイナンバーなど)
・手数料(遺言書1通につき3,900円)
このうち、保管申請書は、法務局のHPからダウンロードもできますし、私のように窓口に行けば直接もらうこともできます。
用紙は5枚からなっており、記載する箇所は割と多いですが、遺言者や相続人の基本的な事項が多く、難しいものではありません。
住民票は、コンビニでマイナンバーカードを使って取得し、これら必要書類を持って、当日予約の10分ほど前に、大津地方法務局へ行きました。
手数料の3900円は印紙で払うため、まず法務局2階の印紙売り場で購入し、保管申請書の5枚目である「手数料納付用紙」に貼り付けます。
それから、3階にある供託課へ向かいました。
予約をしているため、窓口はとてもスムーズです。
遺言書と付言を提出すると、内容の確認はありませんが、遺言書が法律で決められた要件を満たしているか、のチェックはしてくれます。
そして必要書類を提出します。
当日中に「保管証」を受け取りたい場合は、1時間ほど待てば発行してくれますが、私は郵送を希望しました。
それも事前に確認をしており、封筒と切手を持参して郵送を依頼したので、窓口の滞在時間は10分もありませんでした。
その後、1週間ほどで自宅に「保管証」が届きました。
これで手続きは完了です。
遺言者の死亡後の手続きは
遺言者が亡くなった際には、法務局から相続人に「遺言書が保管されている」という案内が届く仕組みもあり、私は娘に届くよう設定もしました。
この設定があってもなくても、遺言者の死亡後は、相続人は
① 遺言書保管事実証明書の交付請求
② 遺言書情報証明書の交付の請求
という段階を経て手に入れた遺言書(実際には遺言書情報証明書)を使って、家庭裁判所の検認を経る必要なく、相続の手続きが行えるようになる・・という流れです。
本来、自筆証書遺言というのは、遺言者の死亡後に家庭裁判所の検認手続きが必要なので、相続人の方に動いてもらうことが多くなり、また検認手続きにも時間がかかるので、相続手続きを始めるまでに時間を要します。
同じ自筆証書遺言であっても、法務局に預けると、この家庭裁判所の検認が不要、というのは大きなメリットと言えるでしょう。
とはいえ、やはり死亡後の手続きはそれなりにあるので、生前の作成は手軽であっても、公正証書遺言の方が死亡後は断然に楽だな、ということもよくわかりました。
今回私は、手続きの方法を法務局のHPから印刷して、娘にわかるように、遺言書のコピーや戸籍などを一緒に一つのファイルにまとめ残し、口頭でも娘に必要事項を伝えて、任務を終了しました。
公正証書の便利さには劣りますが、これで私が死んでも娘の負担はかなり減る、ということで、私自身がとてもホッとしました。
手続きを経験して思ったこと
遺言書を法務局預かりにするには、本人が窓口に行って手続きをする必要があります。
代理人ではいけません。
そして、財産目録などはエクセルでまとめたり、通帳コピーを添付する、なども可能なのですが、全文は自筆で書く、ということができないといけません。
そうなると、この手続きは、自分で文章をある程度間違えずに書くことができ、自分で法務局へ赴いて手続きをすることができる人が使える制度、ということになります。
お元気で遺言書を書けて動ける方の制度だな、ということを実感した体験ともなりました。
他にもお伝えしておきたい点がいくつかあります。
・法務局へ預けてしまうと、手元に何も残らないため、必要な方は遺言書のコピーを事前に取っておきましょう。
・自筆証書遺言を法務局預かりにしていることを、相続人の方に伝えておきましょう。
自分の死亡時に、相続人へ法務局から通知が行くように設定はできますが、住所が変わっていれば届かないこともあります。
いざ亡くなった時に、遺言内容を実現できるように、しっかりとお伝えしておき、どのような手続きを経る必要があるのか、ご家族でコミュニケーションを取っておくことが大事です。
最後に・・
最近強く思うことは、
遺言書を書くにふさわしいタイミングを図っていても、そんなタイミングはなかなかありません、ということです。
なぜなら、生きている限り自分だけでなく、ご家族にもいろんなことが起こるからです。
人生は常に動いています。
この先のことがわかるわけでもありません。
まずは遺言書を書いてみる。
そして、状況が変われば書き直す。
それがいいのではないでしょうか。
私のように、自筆証書遺言でもいいではありませんか。
ぜひ、早速始めてみてください。
お手伝いさせていただきます!



